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銘木ってなに?

「木」の文化と銘木

ヨーロッパの文化が「石」の文化、中国の文化が「土」の文化といわれ、日本の文化を「木」の文化という理由には、わが国が古くから良質の天然材に恵まれていたのみでなく、日本人が「木」を使う技術に優れた民族であったという事情もあります。

銘木しかし、ここでいう「木」の文化とは、何も神社仏閣や城郭、あるいは地域での歴史ある住宅や店舗、料亭など利用者が特定の層に限られた世界のみを指すものではありません。いわゆる一般の町人など市井の人々の生活は、近隣の林地から伐出される木材や薪炭などによって支えられてきていましたし、ちょっと前までの秋田や能代といった地方都市では近接林地はもちろんのこと、各河川流域の森林や林木との深い結び付きを保ちながら生活文化を築いてきたのです。

いわゆる「銘木」はそうした生産と流通との歴史的な側面から形成されてきた文化でありましょう。しかも、繊細な感覚に裏付けられた美意識の価値評価に重きを置いて選別化されてきたものだと思われます。その一つが「銘木」というジャンルなのです。そしておそらく、銘木が使われてきた範囲は一般的には、床の間の周囲(床廻り材)と数寄屋もしくは数寄屋風建築材に使われてきた材料でしょう。つまりは和風建築部材です。

例えば、床の間といってすぐに思いつくのは床柱であり、違い棚や天袋、天井板や廻椽、長押、鴨居などがあります。これらは秋田産地の杉からも生産・供給されている部材ですし、その種類や寸法、規格の多彩な品揃えが可能です。特に、天然秋田杉の里として木材産業の蓄積の多い能代には、それぞれの専門メーカーがあり、その流通を担う銘木市売市場もあります。

ただ、銘木という世界に限ってみれば、これら天然秋田杉製品の多くはつい最近まで銘木の枠外にあったのです。最近までといっても第2次世界大戦中のことですから、せいぜい60数年くらい前です。戦時中、わが国では一般木材と銘木を区別しようという動きがあり、銘木とは何かという定義を明らかにする必要がありました。

いわゆる「銘木査定標準規格」、通称・銘木識別基準というものが提示され、実際の用途と関連させた29種類の銘木が定義されました。その中に実は、はるか幕藩時代の昔からすぐれた建築材料として使われてきた天然秋田杉の構造材や造作材などは銘木の範疇に含まれなかったのです。

その背景には東京と大阪という2大消費地業界の既得権擁護的な色合いの強い動きがあったともいわれていますが、秋田産地ではすでに銘木として取り扱われているものが全国的には「銘木の次にランクされる高級特殊材」としてしか扱われていなかったという時代もあったのです。

銘木今、この段階で「銘木とは何か」について、一応触れておきましょう。つい最近まで全国銘木連合会の専務理事を務められた春永剛聖さんは「銘木商売落書き帳」の中で極めて分かりやすく「国産材、外材を問わず貴重な木材の総称で、具体的には高品質木、大径木をはじめ、奇木、変木、老木、社寺木、由緒木、枯損木、稀木などであって、一般材とは品位を著しく異にし、優美な色彩、光沢を持ち、かつ美麗な木目などを備え、趣のある用材を採材できる原木およびその加工品をいう」と定義しています。この説明で銘木というものはほとんどカバーされていると思います。

さて、その「銘木」に天然秋田杉は含まれませんでした。そこで、昭和22年7月に京都・嵐山で開催された日本銘木林産組合連合会(現在の全国銘木連合会)の創立準備総会に大挙して参加した秋田の業界人らが、「天下の3大美林材でしかもその最右翼である天然秋田杉が銘木でないのはおかしい。今後とも全国の消費者の皆さんからは質量ともにかわいがっていただくことになるので、皆さんにとって最も利益のある秋田杉を、吉野杉、土佐杉とともに全国の『銘木の定義』の中に謳っていただきたい」と緊急動議を提出し、他産地の理事らの同調を得て、「天然秋田杉銘木」の名がはじめて陽の目を見たという経緯があります。

それにしても、豊臣秀吉の伏見城造営に伴う作事用板の出荷から400年余、朝鮮半島や中国大陸にまで出荷され、全国の和室部材として住まいの空間を飾ってきた天然秋田杉は国有林の計画的生産があと5年、平成24年度で終わろうとしています。本来の意味でのブランド力を築いてきた天然秋田杉が、その後継世代である人工林の秋田杉に新たなブランド性を託することができるかどうか。それはその秋田杉を生かし切るために頑張る人びと、つまり私たちの年代の努力いかんにかかっているのだと言えそうです。

ところで、「銘木」で気になることが一つあります。それは、「銘木」の読み方です。秋田では銘木業者のほとんどが「めいもく」と読ませています。メールアドレスやホームページのURLもアルファベットながら「めいもく」と綴られている場合が多いようです。ところが、関東以西の業者や市売市場ではそのほとんどが「銘木」を「めいぼく」と読ませています。筆者が長い間お付き合いしてきた業者さんの中でも関東以西では「めいぼく」が多かったと記憶しています。

「もく」と「ぼく」。これはどう読むべきなのでしょうか。日本(にほんとニッポン)もあります。さて、皆さんからのお返事をお待ちしています。

参考文献: 「銘木史」全国銘木連合会:昭和61年2月 「秋田杉銘木のあゆみ」協同組合秋田県銘木センター:昭和53年10月


((財)秋田県木材加工推進機構 薩摩 2007年4月)


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